れぐるすの丘

読書感想文

アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック を読みました

以前「チームに変化をもたらそう」というエントリを書いたが、手っ取り早く変化を作り出すのに新しいふりかえりのアクティビティを導入することはシンプルで強力な手段だと思ったので、なにかヒントをもらうために読んでみた。

タイトルの通りふりかえりという会議の意義・始め方・手法や、いくつかのアふりかえりクティビティがわかりやすく紹介されている。また、とあるチームのふりかえりによる改善プロセスが漫画によって描かれているので親しみやすい。
「ふりかえりって何」「始めたいけど何から始めればいいのかわからない」といったところから、「改めてふりかえりについて学び直したい」「組織にふりかえりの分化を広めたい」といったニーズまでカバーしているので、普段のふりかえりの前に軽く読みなおしたりするのも良さそうだ。

アジャイルなふりかえりの書籍としては “アジャイルレトロスペクティブズ” が有名だが、こちらはちょっと慣れた人たち向けなような気がする。以前読んだがだいぶ忘れてきているのでまた読み直そう。


個人的な意見ではあるが、職種を問わずチームとして活動する組織であればふりかえりを導入する価値があると思う。

会社という組織に属している以上、利益を出すための定量的な指標によって行動することが求められる。数値としての KPI にとらわれてしまいがちだが、一方で組織に属するということは必ず人間関係が発生する。これは定量的には表すことができないはずだ。

ふりかえりによって、人間関係やコミュニケーションといった定性的な側面にフォーカスできる場が設けられるので、無駄でしかない人間関係の問題やコミュニケーションエラーを未然に防ぐことができる。「すべての悩みは対人関係の悩みである」とアドラー心理学でも述べられているように、良好な人間関係によってパフォーマンスが上がるのは言うまでもない。

などとふりかえり信者のようなことを言っておきながら、かくいう自分もチームのふりかえりに若干マンネリを感じていたので、本書を読むことで改めてふりかえりの目的や意義を再確認しチームを見直す機会になった。

TOEIC を受験しました

今年の頑張りたいことの1つに英語学習を掲げており、そのマイルストーンとして TOEIC L/R テストを受験した。 受験したのは 2023/10/29 の午後、第337回。

受験した理由は大きく2つ。 前々から英語できるようになりたいという漠然とした理想はあったものの、結局何もせず低きに流れる生活を送ってきた自分にムチを入れたかったのと、本気を出したらどこまで行けるのだろうかという自分のポテンシャルを知りたかったからだ。

年始から英語の勉強自体は少しずつ取り組んでいたが、TOEIC 対策として本格的に取り組んだのは8月終わりからの約3ヶ月くらい。

やるからには自分が納得できるくらいの点数は取りたいと思い、800点を目標とした。
忘備録としてこの3ヶ月でやった勉強法を簡単にふりかえろうと思う。

使った書籍

TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ)

いわゆる金フレ。ちゃんと受験したことがある人なら誰もが知っている本。

単語を知らないのに文章が理解できるわけないのでひたすらやった。7周くらいやったと思う。
序盤の方は知っている単語も多かったが、860〜くらいから知らない単語しか出てこなくて覚えるのがかなり辛かった。

単語の暗記には Notion データベースを使った。

こんな感じで

  • 単語
  • 意味
  • 例文
  • Level (本のセクション)
  • 苦手チェック
  • 備考

のプロパティを作り、表示/非表示を切り替えることで単語と意味がそれぞれ復習できるようにした。

単語だけでなく学習全般を Notion で管理したことでスマホや PC から単語帳を見られるようになり、場所にとらわれず思い立ったタイミングで学習できるようになったのはかなり効果があったと思う。

駅1題! TOEIC L&R TEST 文法特急 (TOEIC TEST 特急シリーズ)

PART5, 6 対策として買った。

問題の傾向を掴むのにはちょうどよかったが、3周目くらいから問題の解き方ではなく答え自体を覚えてしまいあまり効果がないように感じてしまった。
1周ごとに期間を開けて復習するのが良いだろう。

ALL IN ONE TOEIC テスト 音速チャージ!

個人的に文章を読むのが苦手で、日本語の文章でさえ目が滑ってしまい読み直すことがしばしばある。ましてや英語は言うまでもない。
英語リーディングのスピードアップのためには Chunk Reading が良いという情報を得たので、おすすめされていたこの本を買った。

Chunk Reading とは、その名の通り文章を意味のある塊に区切り、英語の語順で前から意味を理解していくという読み方である。
たとえば

I'm aiming for a score of 800 on TOEIC.

という文章があったときに

「私は TOEIC で800点を目指しています。」

ではなく

「私は目指している / 800点を / TOEIC で」

というようなイメージ。

単語帳としてだけでなく、文法や語法のまとめも巻末に充実しており、ALL IN ONE といういうだけありかなり有用な1冊だと感じた。 ただ、書籍の説明に700以上を目指す人向けとあるように難易度は高めだった印象。そこに妥協せず取り組めたのが良かったのかもしれない。

公式TOEIC Listening & Reading 問題集 10

試験前の模擬試験用として、また、実践的なリスニング、特に PART3, 4 の練習のために買った。

第9版と悩んだが、どうせなら新しい方がいいだろうと思い第10版にした。 ただ、出版されたのが 2023/10/17 と試験直前だったので、満足が行くまでやり込めなかったのが若干悔いが残る。

リスニングは AI英語教材 abceed(エービーシード) のアプリを使って通勤中や散歩のお供に勉強した。 再生速度を変えられるので、1.2 〜 1.5 倍速で聞き取れるように頑張った。

その他

YouTube の動画たち

主にリスニング練習として使った。特にこのあたりの動画シリーズにはかなりお世話になった。 ありがとうございます。今後も活用させていただきます。

同じ文が繰り返し読まれるのでシャドーイングの練習になるし、動画が1本20分程度なので通勤中に毎日聞きながらマスクの下でボソボソ言っていた。

結果

結果は820点だった。

受験後は手応えなくかなりブルーだったが、なんとか目標を達成することができた。
事実 Reading は解ききれず最後の長文は塗り絵をしてしまったし、PART2 はかなり難しい印象があった。

また、リーディングの苦手を克服できていないのが結果からも明らかである。
おそらく英語の文章を読む量がそもそも圧倒的に足りていないのだろう。TOEIC 対策としてではなく、例えばニュースなど、普段から英語を読む習慣をつける必要がありそうだ。

所感

820点を取れたことはもちろん嬉しいが、それよりも

  • 自分の中で高い目標を設定し、それが達成できたこと
  • 可処分時間を勉強に費やし努力したこと
  • それを習慣化し継続できたこと

という努力が実を結んだことが何よりも嬉しいし、今まで低きに流れていた自分を打ち負かし成長した自分を実感することができた。

最終的な目標は英語を使って仕事ができるようになりたいと考えているので、5年、10年レベルの話だと思うが、毎日1mmの成長を続けていきたい。

Certified ScrumMaster© の更新が近づいてきた

2022年頭に Certified ScrumMaster© (CSM®) の資格を取得してから、早いものでもう1年半以上が経った。

チームのスクラムマスターになった当初を思い出すと、スクラムという型に現在のチームを当てはめる、守破離で言うところの「守」に精一杯だったように思う。

1つの開発チームが複数のシステム・プロダクトを抱えている現職の組織的な制約がある上で、チームをスクラムの型にどう当てはめるのか?各種イベントの時間確保は?この場合のプロダクトオーナーはどうなる?といった具合だ。

色々試行錯誤して時間も経ち、チームとしてもかなりまとまりが出てきたように思う。

だが、あえて厳しい視点から見ると、少しずつチームのマンネリ化を感じることが増えてきた。 自分だけでなく、メンバーも感じているはずだ。

私自身、事なかれ主義、足るを知る傾向にあるため、正直に言って今のチームはとても居心地が良い。それなりの成果をコンスタントに出せているのも確かだ。

しかしアジャイルな組織を目指す上でこれは黄色信号である。居心地の良さにとらわれると保守的な思考に縛られ、コンフォートゾーンという蟻地獄から抜け出せなくなり、我々の成長はここで打ち止めとなる。

だから私たちは、大変だけど「変化」を受け入れ、作り出していかなければならない。

そしてその「変化」を積極的に作り出しチームを「破」に導くきっかけを作るのは、紛れもないスクラムマスターなのだろう。

モチベーションが高いタイミングで色々と勉強し直そう。

A Philosophy of Software Design を読みました

友人からのすすめで "A Philosophy of Software Design" という本を読んだ。

本書は「ソフトウェアの複雑性」というテーマを軸に、筆者の経験からそれに対する向き合い方と明瞭なソフトウェアをデザインするためのノウハウについて書かれている。

ここで言う複雑性とは、システムの理解や変更を大変にするソフトウェアシステムの構造に関連するすべてのもの、と述べられているが、大きく次の3つによって引き起こされるという。

  • Change amplification
    • 単純な変更なのに修正箇所が膨大になる
  • Cognitive load
    • 認知負荷が高まってしまう
  • Unknown unknowns
    • 何を変更すればいいのかわからない

いわゆるレガシーシステムを保守・運用している身としては、まさに言い得て妙という感じだ。 当時の担当者の離職や契約終了によりブラックボックスと化してしまっているシステムも少なくなく、複雑性の塊に違いないだろう。

これらを生み出す根本的な原因は「依存性」と「曖昧さ」であり、いかに減らしていくかを考える必要がある。 本書はモジュールやクラスといったマクロな話題から始まり、コメント・変数名など明日使えるテクニックにいたるまで書かれているため、ソフトウェア開発の様々なプロセスで「複雑性」についての気づきを与えてくれる。

私はデザインパターンについては詳しくないので前半部はそこまで納得感はなかったが、後半部、特にソースコードコメントに関しては、自分がぼんやりと描いていた「こうするといいんじゃないかな」が言語化されており、なんだかすごく親近感が湧いた。

1つ抜粋すると

  • コメントは先に書こう
    • 最初に書くことで文書化が設計プロセスの一部になる
    • 設計上の重要な問題が記録される
    • コメントが長くなってしまうようなメソッドや変数は適切な抽象化が行われていない証拠。それを早期に発見できる
    • 早期に設計上の問題を発見できるので、結果としてコストが減らせる

といった具合だ。

実は以前、未経験の新入社員がチームに配属された最初の開発で似たようなことをやった記憶がある。当時は「コメント同好会」などと言ってコメントを書くハードルを下げていたのも思い出した。実装としてはバッチ処理を1つ作るくらいの小規模なものだったが、第1ステップとしてモブプロチックに開発メンバー全員でソースファイルにコメントを書く、ということをやったのだ。そのときは新入社員を置いてきぼりにしないくらいの目的だったが、これによって抽象化が行われ

  • ビジネスロジックはどうなっているか
  • どんな戦略で処理を組み立てるか
  • 入力と出力はどうなればよいか

といった実装者の暗黙知となっていた部分が伝搬し、新入社員を含めたメンバーの知識を一定のレベルで合わせることができていたんだなと再確認できた。

人によって携わる分野が異なるので、一概に全て正しいといえるものではないと思うが、私のようなレガシーコードや複雑なビジネスロジックに日々向き合っている身としてはとても納得感があり、日々の開発に取り入れようと思う内容だった。

ただ、2023/09/12現在英語版しか出版されていないので、ハードルを感じない方はぜひ読んでみてほしい。


おまけ

本書を読んでいて「あいまいな」という意味の単語がいくつか出てきたが、ニュアンスが微妙に違うらしい。

  • vague: 詳細がわからない・十分な情報がないので曖昧
  • obscure: 情報はあるが難しい・わかりづらくて曖昧
  • ambiguous: 様々に解釈できるので曖昧